生薬名"紫蘇葉(葉)・紫蘇(種子)"
中国中南部地方原産で、日本には奈良~平安時代の頃に渡来し、薬用や香味(こうみ)用食品として現在まで各地で栽培されてきた1年生草本です。貝原益軒(かいばらえっけん)は「大和本草(やまとほんぞう)」という本に「紫蘇」を載せ、葉の表裏ともに紫色で、香気(こうき)があるものを良品としています。また、採取についても「梅雨の前後に速やかに葉をつみとること」とのべています。
草たけは、60cmくらい、茎は四角で葉は広卵形で、縁にぎざぎざがあり茎に対生します。普通、茎葉(けいよう)ともの紫色で花が白色のアオジソ、葉がちりめん状にしわの多いものをチリメンジソ、両者の性質をもったアカチリメンジソ、表面が緑色で裏面が紫色のカタメンジソなどがあります。
葉は6~7月の開花前に採取を始め、半日ほど日干しにしたあと、風通しのよい所で、陰干しにします。これを生薬の蘇葉(そよう)または紫蘇葉(しそよう)といいます。
10月頃種子を陰干しにしたものを紫蘇子(しそし)といい、茎のみを天日で乾燥したものを紫蘇梗(しそこう)とよんで、それぞれ薬用とします。精油は一般に出穂期までが含量が高いとされています。そのため葉を用いるときは7月~8月の開花期前に枝葉を摘みとるか、葉だけを乾燥させて冷暗所に保存しておくとよいでしょう。また、シソにはアオジソとアカジソの系統がありますが、一般的には薬用にはアカジソを使います。アオジソが薬用になるかどうかはまだ結論がでていません。
葉には殺菌、防腐、解熱、解毒作用があり、昔から梅干の着色、着香料として使用されてきました。ノイローゼ、ストレスなど気分がすぐれない症状をとるのに よいとされ健胃整腸、食欲増進、神経症、鎮静、せきなどにも用いられます。慢性気管支炎の治療には、シソ葉と生姜(10対1)を煎じたものを毎日朝夜の2 回服用します。
果実は鎮咳去痰、便秘によく効き、茎を用いた紫蘇梗(しそこう)は、気分のモヤモヤを去り食欲不振、消化不良に有効であるとされています。 用い方は、葉、果実、茎ともに1日量5~10gに水〇・4リットルを加えて約半量まで煎じ、2~3回に分け食間に服用します。紫蘇葉配合の漢方薬である柴 朴湯(さいぼくとう)や半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、来局される患者さん達の咳や不安神経症などに、実際、大変効果のある漢方薬です。
雨が多く憂うつな気分になりやすいこの時期、身体にやさしい漢方で気分をリラックスさせて元気を取り戻されると良いと思います。