生薬名"枇杷葉"
ビワの名は楽器の琵琶に似ているので名付けられたとされていますが、葉の形なのか果実の形に由来するものなのかは定かではありません。
江戸時代の川柳に「枇杷と桃 葉ばかりながら 暑気払い」という句があり、ビワもモモも、果実には効能があまりないのに、葉っぱには暑さを払う力がひそんでいる。という意味ですが、ビワの葉を使った暑気払いの飲み物がその当時は人気を集めていたようです。
中国の揚子江沿岸や南部地方と、日本の関東地方以西に野生し、好石灰岩性の植物です。
葉は大型で互生(ごせい)し、長さ約20センチメートル、幅約5センチメートルの楕円形で先は尖り、基部は狭くくさび形で、葉縁は波状の鋸歯(きょし)が あります。葉の上面は初めのうちは毛がありますが、後に脱落して光沢のある脂緑色になります。下面にはラシャ状に褐色の毛が密生し、質は厚く革質です。
10~11月ごろ、枝先に円錐花序をつけ、芳香のある白花を多数つけます。花軸から花柄、がく片のすべてが褐色の柔毛におおわれてラシャ状になっています。
果実は液果で経4~5センチメートルの球形から倒卵形で、初夏に橙色に熟します。果実の表には柔毛があって、種子は赤褐色で大きく3~5個入っています。
葉は必要なときに摘み、葉の裏の柔毛を取り除いてから水洗いして生のまま用います。
疲労回復、食欲増進には、果実1kgを水洗いし、水気をよくとってから、ホワイトリカー1・8リットルにグラニュー糖150gを加えて漬け、3~6カ月後にこしてビワ酒とします。
これを一日3回20ミリリットルくらいづつ飲むと良いでしょう。
夏が近づくこの季節、夏場の皮膚病や打撲、疲労回復などにはり薬や飲み物として役に立つビワの葉を前もって用意しておかれるとよいでしょう。
あせもには、葉を3枚ほどちぎり、水0・5リットルで煮出し、冷めた汁で患部を洗うようにします。
打撲、ねんざにはビワの葉約30枚を水洗いして、1cmほどにきざみ、水気をとってから広口びんに入れ、ホワイトリカーを葉が浸るまで注ぎ、2~3週間お いてこれをこしてから脱脂綿に浸して患部にあてます。その上から乾いたタオルなどにのせて、さらにカイロで暖めます。これは前もって作っておくとよいで しょう。
せき止め、暑気あたり、胃腸病には葉2枚をちぎり、水0・4リットルを加えて煎じ、約2分の1量まで煮つめ、適当なときに飲むようにします。