生薬名"山椒"
椒(しょう)とは、"小粒に締まった"という意味で、山に生えるので山椒の名になったとされます。日本、朝鮮半島南部に分布し、山野に普通に見ることができます。香辛料として家庭料理材料に用いられることが多く、生活に深く結びついて親しまれてきました。薬用には、果実の果皮と種子を別々に用いられます。
刺(とげ)が多く、小枝の葉の基部に一対づつあります。春になると緑黄色で小型の花を多数つけます。雄花と雌花の区別があり、雌雄異株(しゆういしゅ)です。秋に表面がでこぼこした小さい球形の果実をつけます。果皮は紅熟して中には黒色の種子があります。
刺のない品種のアサクラザンショウは果実も大きく香りもよく、種子が容易に果皮と分離する優良品種です。これは兵庫県で偶然発見された変種であり、長く貯蔵しても変色が少ないこともあって、全国に伝わっています。
葉は5月、果実は9月頃に採取します。果実は天日で乾燥させてから、たたいて種子を出し果皮だけにします。
山椒は苦味チンキの原料であり、芳香辛味性健胃、整腸剤とされます。内容成分のサンショオールやサンショウアミドは大脳を刺激して内臓器官の働きを活発にする作用があるとされ、消化不良や消化不良による胸苦しさ、みぞおちのつかえ、冷え腹、腹部のガスの停滞、それに伴う腹痛に効果があります。信州では、1日1粒づつ果実を食べると疲れがとれるとされて用いられている所がありますが、山椒は刺激が強いため胃腸炎やかいよう、発熱性のような激しい病気に使用することは避けたほうが良いでしょう。1日量は2~5gで、0.3リットルの水を加えて約半量になるまで煎じて1日3回食後に分服します。民間薬としての利用面も多く、種子は利尿剤として15gを煎剤として食間に3分服します。また水虫には煎汁を塗ったり、毒虫に刺されたときには、生の葉を塗ると良いでしょう。最近では、腸管手術の後などに"大建中湯(だいけんちゅうとう)"という漢方薬が薬局や病院で処方される事がありますが、この中にも山椒が含まれており、山椒のお腹を温めてくれる働きを利用しながら術後の回復に役立てようという意味もあるのだと思います。