生薬名"当薬(とうやく)"
「良薬口に苦し」とはセンブリにぴったりのことばで、センブリは千回振り出しても(煎じても)まだ苦いことから名前の由来があります。また、別名"当薬(とうやく)と呼ばれるのも「まさに薬」の意味があり、よく効く薬であることの現れなのです。
センブリは初秋のころ、高さが10~20cm位になります。花、葉、茎、根の全てが噛むと苦く、全草を薬用に用います。センブリは林間や草地で他の植物が少なく、山肌が崩れた後などの土砂の移動が少なく、やや土壌が露出して湿り気味の環境に好んで生育します。開花は発芽した翌年の秋になります。まれにその年に開花するものもありますが、殆どは2年生植物として翌秋の開花となります。
全草を利用する薬草類は一般的に開花期に採取をしますが、自然界から直接採取するときはその種の絶滅が危惧され、特にセンブリの場合、開花期が終わって種子の散布がすんだあとでも苦味は強く効き目に変化がないので、開花期を避けて結実が終わる頃に採取するよう心がける必要があります。
日本ではおもに健胃薬として消化不良、食欲不振、胃痛、腹痛、下痢などに利用します。乾燥した全草を粉末にして1日3回、毎回0.03~0.15g(耳かき1杯位)を内服します。煎剤として使用する場合は乾燥したセンブリ1~2本をそのまま折って茶碗に入れ、熱湯を注ぎ、苦味成分が溶け出してから冷やして飲みます。繰り返し2~3回は使用することができます。また、センブリには毛根を刺激して発毛を促す作用があり、50%のアルコールに約5%の割合でセンブリの粉末を入れて約1カ月間冷暗所に放置したものを薄毛の部分に塗布してよくマッサージをします。このように他用途に渡って使用範囲の広いセンブリは、以前は山の中に入るとよく見られたそうですが、乱獲の影響なのか最近では殆ど自然状態でお目にかかる事がありません。我が家では生薬問屋から仕入れたセンブリの乾燥品を胃腸の具合の悪い時に煎じて飲む事があります。確かに味はビックリする位に苦いのですが、いつの間にか症状が楽になっているので効き目は確かに良いのだと思います。