アンズ(バラ科)
生薬名"杏仁(きょうにん)"
生薬名"杏仁(きょうにん)"
■ 解説
杏仁豆腐(あんにんどうふ)の材料で有名なアンズですが、中国北部が原産で、日本には古くから伝来しており、寒い地方に適する果樹のため、東北地方や信州地方の山梨県や長野県などで栽培されていて一般の人家でもよく見ることができます。
同じバラ科であるウメとよく似ていますが、花はウメより遅れて咲き淡紅色をしています。果実は熟すと黄赤色となり、中央部にある核は熟すと果肉と容易に分離します。
核の中には種子があり、これが生薬の杏仁(生薬の場合はこれを"きょうにん"と呼びます。)となります。
■ 採取と調整
6月頃に種子を集めて天日で乾燥させて生薬の杏仁(きょうにん)として使用します。
■ 薬用途
杏仁はアミグダリンという成分を含み、古来より鎮咳薬としてぜんそく、せき、呼吸困難などに用いて効き目があります。特に、杏仁は身体に対してうるおいをつける働きが強く、乾いた咳、痰に対してもうるおいをつけて治す効果を発揮します。又、その働きを利用して皮膚の乾燥に用いたり、便秘に使用したりします。但し、杏仁はあまり多量に用いすぎると、体内で分解されたときに生ずるシアン化合物によってふらつき、嘔吐、更に多量に用いるとけいれんや意識障害、呼吸困難などの中毒症状が起きる場合がありますので、服用量を守ることが大切です。使用量は、一日量3~5gを煎じて用いますが、多くは咳止めの漢方処方である麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)や麻杏?甘湯(まきょうよっかんとう)等の原料として使用されています。
使用法さえ正しければ、咳に大変良い生薬ですので、咳の出易い方にとてもお勧めです。