イノコズチ(ヒユ科)
生薬名"牛膝(ごしつ)"
生薬名"牛膝(ごしつ)"
■ 解説
秋になると、イノコズチの果実が動物や衣類にくっつき、そのおかげで果実が遠くに散布されます。 これは果実から脱落しない"とげ"によるものです。
■ 形態
よく成長したものは多くの枝を出して1mほどに伸びて拡がり、やぶをつくります。茎は四角で葉は対生して節はふくれて高くなり、猪や牛の膝のふくらみを思わせるので生薬名は牛膝といいます。
夏になると葉のわきから長い花茎を出して穂になって緑色の花をつけますが小さくてあまり目立ちません。
若葉はゆでていろいろに調理して食べることができます。
■ 採取と調整
茎や葉を薬用としても良いようですが、おもに根を牛膝として漢方では用いています。採集時季は秋から冬の地上部が枯れている頃で、土をよく落として乾かして使用します。
■ 薬用途
古人は牛膝には"下行"する性質があるとしています。"下行"とは具体的には、
(1)月経を順調にする、排便を容易にするなどの"下方に排出"すること。
(2)頭部や上半身の血液を"下方にみちびき"身体上部の充血を軽減すること。
(3)他の薬物の薬効を"下方に導いて下半身に到達させ、下半身の疾患に効果を生じさせること。
以上の働きを利用して牛膝を利尿、浄血、通経薬として月経不順、産後の出血、中風、脚気などに用います。しかし子宮収縮作用があり、堕胎の恐れがあるので妊婦の方の服用は避けたほうが良いでしょう。また、胃弱の人は用いないほうがよいようです。
月経不順、浮腫、リューマチ、脚気などに用いるには牛膝を1日量5~10gに400mlの水を加えて煎じ、約2分の1に煎じたものを1日3回に分けて服用します。