婦人病の妙薬として知られるものです。古代エジプトやギリシアの時代から用いられてきました。南ヨーロッパ、小アジアが原産で、日本で栽培が行われ始めたのは明治十八年頃とされています。花は秋になると開花します。5月初めに畑から掘り上げた球茎(きゅうけい)を、風通しのよい所で乾 燥して保存します。サフランは夏の高温期から秋に冷気を感じるころになると休眠を止め、花のつぼみを出し始めます。その頃に畑地に直接移すか、浅い木箱やかごに球茎を入れて室内におけば50日くらいで開花します。
開花すると濃紅色のめしべが目立ち、めしべの長さは6cm位となり、先端部分は黄色味をおびています。開花するのは早朝で、開花するつぼみの先に濃紅色のめしべの先端部が顔を出してきます。雨などにぬれると色があせるので、開花と同時に、めしべの柱頭と花柱の濃紅色に着色した部分を抜き取って乾燥させます。そのまま日干しや陰干しにするとチリチリになってしまうので、速やかに乾燥させる必要があります。ストーブなどで40~50℃くらいの温度を保って乾燥させるのがよく、3~4時間で乾燥を終わるようにします。これが生薬の"サフラン"です。
薬用には、婦人の血の道の薬として更年期障害、月経困難、無月経、月経過多などに常用します。気分のすぐれないとき、ヒステリー気味のとき、なかなか寝付かれないとき、頭痛、めまいがする時によく効き目を発揮します。1回量は0.2~0.3gで、民間薬として一般に飲用するにはサフランを8~10本とり、湯のみやコップに入れて熱湯を注ぎ、数分間放置するとダイダイ色に染まり始めます。これを一日数回に分けてお茶のようにして飲みます。風邪気味のときにも効き目があります。飲みづらいときは湯の代わりにホワイトリカーや白ワイン、ホットウイスキーに直接入れて飲んでもかまいません。但し一日量は 1.5~3gを超えないように注意します。また通経作用が強いので妊婦の方は服用しない方が良いでしょう。日本産のサフランは高価ですが大変品質が良く、昔は国内でも盛んに栽培がされていました。しかし、最近は安い値段の中国産が流通量を増やしているようです。サフランは医療保険適用となっているので、当薬局でも保険をとおしてサフランを服用されている患者さんが多いですが、肩こりや手足にしびれなどが徐々に楽になる方が多いようです。