生薬名"山帰来(さんきらい)"
名は「猿とりいばら」が由来で、この薬草の茎のとげに猿が引っかかって捕らえられる程のトゲがあるという意味です。佐賀県内でも比較的浅山の裾や"やぶ"に多く、山に入ると必ずといってよいほど引っかかれて痛い目にあいます。葉を別名"マンジュノハ"とも言い、饅頭を包むのに用いられたりします。
日本、朝鮮半島、中国の山野に広く分布する“つる性”の落葉低木です。茎は表面につやがあってなめらかで多数に枝 分かれして広がり、まるく卵形の葉を互生します。
葉は厚く、後に硬くなって表面につやもあってなめらかであるため、古くから饅頭や 団子を包んで蒸すのに用いられてきました。
葉柄の先に丈夫な巻きひげがあり、これが他物に巻きついて這い伸びていきます。晩春に黄 緑色の小花を一まとまりにして多数つけますが、小さいのであまり目立ちません。秋になって7mm位の赤く熟した丸いつぶらな実が多 数つきます。この中には固い種子があり、そのまわりにやや甘い果肉があって食べることができます。
根は大きく硬く、太い根茎状でそれに針金のようなヒゲ根がついています。この根茎状で不規則な形の太い根を薬用とします。
根は秋から冬にかけて掘り取ります。ヒゲ根は切り捨てて水洗いして日干しします。葉は夏に採集して陰干ししてから保存して使用します。
生薬名で“山帰来(さんきらい)”と呼ばれるようになった由来は、昔、梅毒にかかって村を追われて山に逃げた人が、この根を食べたら病気が治って山から帰ってきたという伝説によるものですが、実際に梅毒にも良いようです。
その他にデキモノや腫れ物には乾燥した根茎10~15gを1日量として水200mlを加えて煎じ、約2分の1量になるまで煮つめて空腹時に3回に分けて服用します。
むくみの改善には葉を使用します。柔らかいものはそのまま乾燥させ、固い物は蒸してから乾燥させます。約10gを300mlの水で煎じ、約半量まで煮つめたものを一日量として食前か食間に3回に分服します。