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慢性肝炎
慢性肝炎とは
肝細胞の一部が破壊されて肝臓に炎症が起こる病変を肝炎といいます、肝炎は急激におこる急性肝炎と6ヶ月以上続く慢性肝炎に大別出来ます。日本において慢性肝炎が問題になる時は、通常B型、C型肝炎ウイルスによる慢性ウイルス性肝炎を指していることが多いです。
長期に亘って肝機能数値の異常を示し、肝臓内の門脈のあたりを中心に炎症細胞の浸潤と肝細胞の破壊像、及び繊維化の所見が見られます。B型、C型共にウイルスマーカーにより診断が確定されますが、日本ではC型肝炎が圧倒的に多数を占めます。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、80%くらいが機能しなくても残りの細胞で何とかしてしまうくらい我慢強い臓器なので、初期では自覚症状がほとんど表れません。
肝炎が進行すると全身の倦怠感や、黄疸などが出てきます。慢性の肝炎から肝硬変までは20~30年くらいかけて比較的緩やかに進行します。
ウイルスによる慢性肝炎(B型、C型肝炎)の最大の問題は肝硬変への移行と肝癌の発生です。臨床的にはこれらの予防と早期発見が重要です。
西洋医学の治療
慢性ウイルス性肝炎は難治で、決め手になるような治療法は見つかっていません。インターフェロン療法も病歴の長い症例に対しては必ずしも期待通りの成果が得られていません。
慢性に肝機能障害をきたす疾患は慢性ウイルス性肝炎の他、アルコール性肝障害、脂肪肝、自己免疫性肝炎などがあります。肝炎という病名にとらわれずにそれぞれの原因にあった治療法を選択することが大切です。
漢方では?
漢方では慢性肝炎を、湿熱型、肝気鬱血型、脾虚型、瘀血或いは陰虚型と大別して考えることができます。

1.慢性初期の場合(湿熱が旺盛)
ウイルスやアルコールによる慢性肝炎は初期の場合、湿熱と呼ばれる熱の症状が現れます。肝炎ウイルスの侵入や、アルコールの過剰摂取によって肝や胆に強い湿熱が生じ、肝の疏泄作用が障害され、肝胆の湿熱によって、胆汁の正常な代謝や排泄が障害され、黄疸や、尿の色が濃い茶褐色、口が苦い、喉が渇く、目が充血(肝の症状は眼に表れる)などの症状が現れます。
漢方処方では、湿熱に対し清熱利湿をはかると共に肝の疏泄作用を改善させる処方を考えます。黄疸のある者に対しては利胆消黄の薬を加えます。
処方には茵陳蒿湯、茵陳五苓散、梔子柏皮湯などがあります。
茵陳蒿湯は肝胆の湿熱を治し、利胆作用と横断を治す働きがあります。腹満、便秘、発熱、黄疸を目標に使います。
茵陳五苓散は五苓散という処方に生薬の茵陳蒿を加えたもので、湿熱の湿が多い状態、つまり水の偏在が熱より多くみられる場合に使います。
梔子柏皮湯は茵陳五苓散とは逆に、湿熱のうち熱の症状が多い場合に使います。
2.慢性中期の場合(肝気鬱滞が旺盛)
肝炎ウイルスの感染が持続し、肝炎が長く続いている状態では肝の疎泄機能は強く障害され、強い肝気の鬱血が生じています。したがってこの時期には胸脇苦満(腹壁の緊張)が顕著にあらわれ、胸が苦しい、発熱、口が苦い、吐き気、食欲不振、頭痛、便秘などの症状が現れます。
漢方処方では、胸脇苦満を去り腹皮拘急を治す処方を考えます。
処方には小柴胡湯、柴胡桂枝湯、大柴胡湯などがあります。
小柴胡湯は肝気鬱結を治す代表的な処方で、胸脇苦満、食欲不振、みぞおちの痞える感じや、吐き気、口が苦く感じる等の症状を目標に使います。
柴胡桂枝湯は小柴胡湯に桂枝加芍薬湯と加えた処方で、小柴胡湯よりも胃腸が虚弱な方に向いています。
大柴胡湯は小柴胡湯よりも肝気鬱結が強く、熱の症状が顕著で便秘やのぼせの傾向があります。胸脇苦満が強く、体格のよい人に使います。
3.慢性後期の場合(脾虚型)
もともと胃腸の虚弱な人や、肝気の鬱結が長引くと肝と密接な関係がある脾胃の働きが障害されて脾虚となります。この時、脾虚による気の不足、肝虚による血の不足が症状として現れます。脾気虚が主である場合、疲れやすい、全身の倦怠感、無気力、食欲不振が顕著です。肝血虚が主である場合、皮膚は乾燥傾向で、口の渇き、手足のほてりなどが現れます。
漢方処方では脾虚、肝虚、肝実から病態や症状に応じた処方の選択が必要です。
処方は、柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遥散、人参湯などがあります。
柴胡桂枝乾姜湯は陽気と呼ばれる体内のエネルギーが不足して、体質虚弱で胃腸に冷えがある人、不眠、口渇、動悸などを目標に使います。
加味逍遥散は更年期障害によく使われる漢方薬ですが、虚証の慢性肝炎にもよく用いられます。肝気鬱結に加え、胃腸虚弱のため気血が不足して肝血虚が生じています。頭痛、肩こり、疲労感、月経不順、精神不安定などを目標に使います。
人参湯は胃腸の虚弱が強く陽気が不足して、無気力感や疲れ易いなどの症状よりも、冷えが先行して起こっている場合に使います。
4.肝硬変移行期(瘀血と肝腎陰虚が生じる)
長期間にわたり肝気の鬱結が続いた結果、肝に血が滞り瘀血が生じます。肝の熱が腎に波及して腎を傷つけてしまい肝腎陰虚(肝も腎も水分が不足した状態)になります。この時期の特徴は肝気鬱血と共に全身に瘀血の所見が見られます。瘀血により顔色が赤黒く、唇の色が紫がかり、肌がガサガサしてきます。肝腎陰虚により皮膚の乾燥、口渇、便秘、小便が少ない、めまい、耳鳴り、疲れやすいなどの症状が現れます。
漢方処方では、肝炎がこの時期にまで進展した結果、肝気鬱血に加えて瘀血、それに肝腎陰虚による津液の損傷や虚熱の内鬱などの複雑な病態を呈しているので、証に随って処方を考えていきます。
エキス剤では、単独の処方でこうした病態に対応できるものがないので、二つ以上の処方が必要になることが多いです。
処方は小柴胡湯合四物湯、小柴胡湯合桂枝茯苓丸、小柴胡湯合六味丸、十全大補湯などがあります。