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膝関節炎
膝の痛み
整形外科に通院している患者さんの約七割が中高年の人で、そのほぼ半数が膝の痛みの治療を受けています。
膝の関節が痛む病気には、次のものがあります。
 ・変形性膝関節症:膝関節の軟骨が磨り減って、膝が痛む病気。
 ・慢性関節リウマチ:全身性の病気で、膝や全身の関節が痛む病気。
 ・半月板損傷:膝関節の中にある「半月板」という軟骨が怪我などで損傷を受けたもの。
 ・大腿骨顆骨壊死:膝の上の骨の一部(大腿骨顆)が壊死しその部分が崩れてへこむ病気。
これらの中で「変形性膝関節症」が最も多く、膝の痛みの治療を受けている人の大多数を占めています。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の関節部分の軟骨が磨り減って、痛みが起こる病気です。
関節は、骨と骨が連結している部分で、体を動かすために重要な働きを持っています。関節内で骨と骨は直に接しておらず、間に軟骨があります。この関節軟骨は、3~4㎜の厚さで、骨の表面を薄く覆っていますが、弾力性があり、表面が滑らかで、すべりがよい性質を持っています。
歩いたり、階段を上り下りすると、膝の関節には、体重がかかって、強い負担が加わります。しかし、関節軟骨の滑らかさやすべりのよさが、骨と骨が接する部分の摩擦を少なくし、弾力性が衝撃を和らげます。ですから、骨そのものが擦り減ることもなく、膝を動かすことができるのです。
ところが、変形性膝関節症で、関節軟骨が徐々に擦り減ると、擦り減るときに生じた軟骨の「磨耗物質」が関節に炎症を起こします。また、じかに骨と骨が接触するようになるので、痛みが起こります。日本人の場合、膝の関節の内側の軟骨が擦り減る人が多く、症状が進むと、脚はO脚に変形します。
  
変形性膝関節症になりやすい人
・五十歳以上の人::年齢が高くなるほど、かかる率が高まります。
・女性::女性が男性より4~5倍も多く発症しています。これは、女性ホルモンの影響や男女の筋肉量の差などが、関係していると考えられています。
・肥満::肥満していると、膝にかかる負担がやせている人より大きくなり、軟骨が擦り減りやすくなります。
・体質::若いときから極端なO脚だった人や、へバーデン結節(手の指の第一関節が節くれだった状態になる)のある人。
  
症 状
 変形性膝関節症は初期のこわばり感から始まり、何年もかかって、少しずつ症状が進行していきます。
▼初期
 痛みというよりこわばる感じがします。膝が伸びきらない感じや、曲がりきらない感じがして、関節が硬くなってきます。歩き始めのときや、寝ていて起き上がろうとするとき、座っていて立ち上がろうとするときに、膝がなんとなく重くこわばった感じがします。こわばった感じは、朝の動き始めの4~5分間だけで、すぐに消えてしまうことも多く、日常生活では気にならないまま過ごしている場合も少なくありません
 歩くときに痛むこともありますが、少し休むと良くなります。痛みは、自然になくなったり、シップなどで治まったりすることがほとんどで、あまり長い間痛む事はありません。
▼中期
 関節部分に炎症が起きて、その結果、膝が熱感を伴って腫れたり、水(関節を包んでいる関節包から分泌される関節液)がたまります。たまった水が多ければ、注射器で水を抜くことが必要になります。
 痛みは、はっきり自覚できるものとなり、初期のころほど簡単には治りません。また、膝が完全に曲がりきらない状態や、伸びきらない状態がはっきりと現れてきて、「歩行、階段の上がり下がり、正座、しゃがむ」などの日常の動作が不自由になります。「ゴキゴキ、ギシギシ」など、関節がきしむ音を感じるようになります。
▼末期
 痛みや膝が曲がらない状態、伸ばせない状態がひどくなり、関節がO脚に変形していきます。そして、「歩行、階段の上がり下がり、正座、しゃがむ」などが困難になり、日常生活に支障を来たします。歩いて4~5分の所へも買い物にいけないなど、思うように外出ができなくなります。
漢方では?
ひざの痛みは、単に関節だけを治療しただけでは治らないと考えます。全身の状態を考慮して処方を考えていきます。関節痛を漢方古典で言うと、湿病、痺病、痿病、歴節病、水気病、虚労病などです。脾虚、肝虚、腎虚から起こる場合が多いですが、まず脾虚からくる場合を考えてみましょう。脾が虚して、胃腸の働きが弱くなると、表からの陽気の発散が弱くなります。それと同時に脾が虚すと体内に余分な水(湿)が多くなります。湿が多くなると余計に陽気の発散が少なくなり、このような時に何らかの原因(多くは飲食、過労)によって陽気の発散が阻害されると熱が発生します。熱は脾の支配している胃腸、肌肉、関節、陽明経などに湿とともに停滞して、なんらかの病証をあらわします。これを湿病といいます。そのひとつが、ひざの痛みです。漢方の古典『金匱要略』に「太陽病、関節疼痛して煩し、脈沈にして細なる者は、これを湿痺と名づく。湿痺の候は、小便利せず、大便反って快し。ただ当にその小便を利すべし。」とあるように、からだの余分な水を小便から出す処方が使われる場合が多いです。それと虚労病から起こる関節痛もあります。もともと脾が虚している人が、手足を使いすぎて疲れた状態になって起こる場合です。
次に、脾虚証からこじれて肝虚証になり、ひざの痛みとしてでてくることもあります。
その他に、腎虚証の場合ですが、中年以降になると腎虚証になりやすく、腎の津液(水)が少なくなると熱が多くなります。その熱が胃に波及すると食欲が旺盛になり、引き締める力も弱くなり肥満になり、ひざの痛みがでる場合があります。漢方古典『金匱要略』では水気病といい「風水はその脈自ら浮にして、外証は骨節疼痛し、悪風す・・・」とあります。
これらのことを参考に、ひざの腫れ、浮腫み、熱感、変形などを考慮して処方を考えていきます。
症例
  
症例
(63歳 女性)
・病気の経過
 5~6年前より膝に水がたまり、月に一度病院へ水を抜きに行かれていました。痛みのため運動ができず、以前50㎏だった体重が75㎏まで増加。加えてコレステロール値も高くなってきました。
  
投薬
ひざ関節の熱をとる「石膏」、余分な水を小便からだす「白朮」などの生薬がはいった処方を主に服用してもらいました。それと、症状が長引いて慢性化しており、肝虚による関節痛と考え、それにあたる処方も併用してもらいました。
また、コンドロイチンという軟骨の主成分とオキソアミジンというニンニクの薬効成分が入った製剤を一緒に服用してもらい、軟骨の強化及び筋肉の強化をはかりました。
 服用開始一ヶ月後、再び来店され
「今まで毎月水を抜いていたのに、水がたまらなくなりました!」と驚きと喜びでいっぱいでした。  その後も一ヶ月単位で服用してもらっていましたが、「無理をしたため又少し痛みと腫れが起こりました」とのこと。そのころは服用して5ヶ月がたっており、一日二回の服用で様子を見てもらっていましたが、また3回の服用に戻してもらいました。  今では犬の散歩が小走りでできるように回復され、とても喜んでおられます。 投薬の他に次のことに気をつけていただきました。
 
食養生
肥満していると関節に負担がかかってきます。体重を減らして荷物を降ろすようにしましょう。
 
運動療法
 関節では筋肉や靭帯が伸びたり縮んだりして骨を動かしています。膝を使わないでいると、筋肉や靭帯が弱くなったり、固くなったりして、関節を使う力が低下し、痛みが増してきます。
 また、膝を動かさないと、軟骨も正常な代謝が保たれなくなり、擦り減りやすくなってしまいます。
 適度な運動を行うことによって、膝組織を活性化し症状を軽くすると同時に病気の進行を食い止めましょう。ただし無理は禁物です。体と相談しながら行いましょう。
 
生活・精神養生
 脳が喜ぶと体も喜びます。今まで書いてきた養生法や薬を服用するにあたって、喜んで行うことが大切です。いやいや行っていても続きませんし、体も喜んでくれません。
 治験例に紹介した人も、来店されるたびに「おかげさまで」とおっしゃっておられました。やはり何に対しても感謝する心で養生されていたのが、早く良くなる結果につながったと思います。
 "痛み痩せ"という言葉を聞いたことがあるでしょうか?痛みのために食欲がなくなり、結果として体重がへり、痛みがなくなるということがあります。痛みによって病気を治そうと体が働いてくれるのです。そうやって痛みでもって教えてくれているんですね。ありがたいことです。
 ですから、痛みを嫌がらす体からの訴えとして捉え、養生し、病気に感謝していけるようになりたいものですね。