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副鼻腔炎
 
副鼻腔炎図1
副鼻腔炎は、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という4種類の副鼻腔のどこかに炎症が起こる病気です。短期間に推移する急性副鼻腔炎と、長期にわたる慢性副鼻腔炎があります。
急性副鼻腔炎:急性副鼻腔炎はさまざまな細菌によって引き起こされるもので、副鼻腔の開口部に閉塞が生じた後によく発症します。閉塞は主に、かぜなど上気道のウイルス感染が原因で起こります。かぜをひくと鼻腔の粘膜が腫れて、副鼻腔の開口部がふさがりやすくなります。慢性副鼻腔炎:急性副鼻腔炎が長引いたり、繰り返したりする ことによって3ヵ月以上症状が続いているもので、「蓄膿症」 とも呼ばれます。
炎症が長引くと、副鼻腔の分泌液の量が増えたり、その粘度が高くなったりして、さらに慢性副鼻腔炎の状態を悪くすることにつながります。引き起こされる症状は鼻づまりや鼻水、頭痛などさまざまです。両親が副鼻腔炎の場合は、子供も副鼻腔炎になることが多いという研究結果もあり、遺伝的な原因もあると考えられています。
症状
副鼻腔炎では、鼻づまり、鼻水、頭痛、嗅覚障害などさまざまな症状が起こります。その他、副鼻腔に炎症が起こると、鼻粘膜の一部が成長して「鼻ポリープ」や「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれる突起ができることがあります。
治療(西洋医学では)
薬物療法
急性副鼻腔炎の場合は、症状を抑える薬(消炎酵素薬、解熱鎮痛薬など)とともに、抗菌薬を服用することが一般的です。抗菌薬を続ける期間は、ふつう2週間以内です。慢性副鼻腔炎の場合は、少量の抗菌薬を長期間飲み続ける特殊な治療法が行われる場合もあります。
その他に、痰や鼻水を出しやすくする薬(気道粘液修復薬、気道粘液溶解薬、気道潤滑薬)などが使われます。
鼻吸引
局所麻酔薬や血管収縮薬を使って、鼻腔と副鼻腔をつなぐ孔のまわりの腫れを抑え、たまった鼻水を吸引して取り除く「鼻吸引」を行うことがあります。
鼻洗浄
上顎洞に炎症がある場合には、鼻粘膜に麻酔をかけて上顎洞に針を刺したり、細い管を鼻腔から副鼻腔に挿入したりして、生理食塩水を注入して上顎洞を洗浄する「鼻洗浄」を行うことがあります。洗浄した後に、抗菌薬などを注入することもあります。
ネブライザー療法
抗菌薬やステロイドを含んだ薬液を霧状にして、鼻などから吸い込み、副鼻腔に送り込みます。幼児や高齢者でも簡単に行える方法です。
手術療法
薬物療法や鼻吸引、鼻洗浄などの処置を行っても副鼻腔炎が治らない場合には、手術を行って、炎症を起こしている粘膜や鼻ポリープを取り除くことがあります。 以前は、鼻の中などから切開を行う手術が主流でしたが、最近は、内視鏡を使った手術を行うことが増えています。
漢方では?
漢方の古典『霊枢(れいすう)』に「肺気は鼻に通ず、肺和すれば則ち、鼻よく臭香を知る」とあるように、鼻は肺に関係していると考えます。また「肺気虚すれば則ち、鼻塞がりて利せず」とあります。経絡から考えてみると、鼻は陽明経が関係(鼻の近くを通っている)し、一部は督脈と太陽経が関係しています。これらの経絡が熱をうけると、鼻の病証が現れやすいと考えます。この三経脈が熱を受けるのには、大きく分けると二つあります。一つは外邪(風邪、寒邪、湿邪、燥邪、火邪、暑邪)からです。最初は肺虚で太陽経または陽明経の実熱または虚熱となって、鼻閉、鼻炎、鼻汁などの症状を現します。これは風寒の外邪によって陽気の発散が悪くなり、これらの経に熱が停滞するためです。もう一つの原因は飲食からです。酒類の飲みすぎ、大食などにより胃の陽気が停滞して、痰飲も発生して、陽明経を中心として督脈や太陽経の熱になっておこると考えます。これらのことから、副鼻腔炎の治療に使う漢方薬は、肺虚、脾虚の処方が多くなります。
症例
  
症例
35歳 女性(160㎝・55㎏)
 職場でのストレスのせいか、以前から肩より首すじにかけての凝りを感じていた。それがだんだんと酷くなってきて、鼻づまりと鼻の奥の痛みがでてくるようになった。
 鼻の症状は単に鼻炎によるものだろうと思い市販の鼻炎の薬を購入して服用してみると、幾分症状は緩和されたように感じられたが、その効果はだんだんと薄れていった。
そのうち目の奥の痛みと後頭部の痛み、そして痛みが強いときは吐き気が起こるようになった。
 そこで耳鼻科に行ってみると、エックス線撮影と鼻腔の所見により医師の診断は副鼻腔炎ということだった。
 治療としては、抗生物質と消炎鎮痛剤の内服と鼻の洗浄で様子を見てみて、改善できないようであれば手術をしましょうということだった。
治療を始めて幾分症状の改善はみられたが、エックス線撮影の結果に変わりはなく、依然として後頭部の痛みや不快感があったので手術をすすめられた。
 蓄膿症の手術に対して大変恐れを感じて、なにかいい薬はないかと相談を受けました。
 
投薬
この方の場合、肩こりや首筋の凝りがひどく、それに鼻づまりがあったので、肩こりの代表的な処方である葛根湯に鼻づまりを改善する辛夷、頭痛を改善する川芎、炎症をさます石膏、陽明経の熱をとる大黄などが加味された清鼻湯という漢方薬をまず一ケ月服用してもらいました。ただ、急性期の症状が激しい時は抗生物質・消炎鎮痛剤の内服は非常に有効で必要ですし、鼻の洗浄もしたほうがいいので、いままでどおり耳鼻科への通院は続けていただきました。
 お薬のなくなる一ヶ月後に再び来店された時には、頭痛・肩より首筋にかけての凝りや鼻の症状は和らぎ、吐き気は起こらなくなったとのことでした。
 そこでお薬をそのまま続けていただいて、調子が良くなられたので、服用回数を減らしていきました。実際、副鼻腔の状態はどうか確かめるためにエックス線撮影を受けていただいたところ、副鼻腔に膿はたまってなかったそうです。
 ただ、完全に服用を止めていると疲れたり、ストレスが強くかかったときに凝りや鼻づまりがでることがあるとのことなので、予防の意味で一日一回の服用を続けていただいて、調子良く過ごしていただいています。
養生と予防
蓄膿症は鼻粘膜・副鼻腔粘膜の炎症が原因です。この炎症が一時的なもので早期に治まる場合はいいのですが、そうでない場合が鼻づまり、鼻汁、鼻の痛み、目の奥の痛み、頭痛等いろいろな不快な症状に悩まされることとなります。それでは、どうしたらそうならなくてよくなるでしょうか。
 それは、全身状態を良好に保ち、自然治癒力を高めておくことにつきます。そうするためには、自分に必要なお薬を服用することと、食養生を始めとした生活養生を正しく行うことです。
食養生
1.甘い物(糖分)を控えましょう
2.食べ過ぎず、飲み過ぎず、できれば食べ足りないかなあというくらいでとどめて ておきましょう。
3.アルコールは控えましょう。
 1と2については、もしもそうしなければ血液が酸毒化(酸性体質)されてしまい、慢性化の原因となってしまうからです。3については、アルコールを飲むと顔が赤くなりほてってきますよね。これは顔だけに起こるのではなく、身体中で起こる現象です。ということは、鼻粘膜・副鼻腔粘膜でも同様で、赤く腫れます。
生活養生
1.適度に運動しましょう。
2.疲労(精神的・身体的)をため込まないようにしましょう。
 1については、過剰栄養の場合、栄養分の消費に役立ちます。これで、血液の酸毒化(酸性体質)を防ぐこととなります。また、体力を向上して、自然治癒力をたかめます。
2については、精神的疲労(ストレス)は身体の緊張を引き起こします。たとえば筋肉が緊張すると凝りが起こります。肩凝りなどはいい例です。凝った部分は鬱血を起こしています。この凝りが、鼻で起こったものが、鼻炎・蓄膿症ということができます。肩凝りが長く続くことは蓄膿症を引き起こす原因になります。肉体的疲労もまた凝りを起こしますし、体調不良を招きます。