過敏性腸症候群とは
腸の粘膜に炎症やポリープ・腫瘍など(器質〈きしつ〉的病変という)がなく、ただ腸の働きが強くなりすぎることによって腹痛や便通異常(便秘、下痢、便秘・下痢を繰り返す交替型)などといった症状が現れる病気です。つまり、腸自体が悪いのではなく、それ以外の何らかの原因で腸を動かす神経が刺激されるために、腸の運動が盛んになり腹痛などが起こるのです。この過敏性腸症候群は、消化器科受診患者の半数近くを占めていると考えられる程多い疾患ですが、種々の検査で異常が見られないために適切な治療が施されないことが少なくありません。
1) 便秘型
腹痛があり、便意があっても便が出にくく、ウサギの糞のようなコロコロとした便が出ます。腸の内容物を運搬するぜん動運動が低下し、また大腸のS状結腸という部分に異常な収縮運動が起こるため、便がせき止められてしまいこの様な便になると考えられます。
2)下痢型
慢性の下痢がつづき、便に粘液が混ざることはありますが、血便はなく、また下痢による体重の減少は見られません。腸の動きが活発で、内容物が急速に運搬するぜん動運動が出現しやすいためにこのような便になると考えられています。特に、胃に食物が入ると大腸が動きやすくなっていて(胃-腸の反射の亢進)食事毎に下痢の発生することが一般的です。
3)下痢便秘交替型
下痢の症状が数日つづくと、便秘の症状が出て、コロコロした便や細い便が出るといった症状が繰り返されます。それ以外にも、おなかがゴロゴロする、ガスがたまる、吐き気、嘔吐のほか、疲労感、頭痛、発汗、動悸などの自律神経失調の症状、不安感や抑うつ感などの精神症状を伴うこともあります。
月曜日の朝や、仕事の前、外出の前など、不安や精神的ストレスが加わる時に症状が出やすい病気です。つまり、ストレスによって腸管の運動異常が誘発され症状が出現するのです。一方、就寝中や休みを控えた週末あるいは楽しいことに熱中してストレスから解放されているときには症状があまりでません。
胃や腸には脳と同じ神経が非常に多く分布していて、脳と同様に「考える臓器」ということができます。また、胃腸と脳は自律神経によりつながっています。従って、脳が不安や精神的圧迫などのストレスを受けると自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達され胃腸の運動異常を引き起こし、腹痛や便通異常が発生します。
月曜日の朝や、仕事の前、外出の前など、不安や精神的ストレスが加わる時に症状が出やすい病気です。つまり、ストレスによって腸管の運動異常が誘発され症状が出現するのです。一方、就寝中や休みを控えた週末あるいは楽しいことに熱中してストレスから解放されているときには症状があまりでません。
胃や腸には脳と同じ神経が非常に多く分布していて、脳と同様に「考える臓器」ということができます。また、胃腸と脳は自律神経によりつながっています。従って、脳が不安や精神的圧迫などのストレスを受けると自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達され胃腸の運動異常を引き起こし、腹痛や便通異常が発生します。
治療(西洋医学)
症状に応じた薬が処方されます。
1)下痢・便秘を緩和 :下痢止め、(下剤、整腸薬など)
2)消化管の運動機能を改善:抗コリン剤、粘膜麻酔薬、腸管運動調整剤など。
3)抑うつ感が強い場合 :抗不安薬、抗うつ薬、自律神経調整剤など。
1)下痢・便秘を緩和 :下痢止め、(下剤、整腸薬など)
2)消化管の運動機能を改善:抗コリン剤、粘膜麻酔薬、腸管運動調整剤など。
3)抑うつ感が強い場合 :抗不安薬、抗うつ薬、自律神経調整剤など。
漢方では過敏性腸症候群を1)精神的ストレス(肝脾不和)と2)胃腸虚弱(脾虚)として考え処方をきめていきます。
1、 肝脾不和の場合
ストレスや緊張などの感情的因子で誘発されるタイプは肝と脾が関与しています。肝は胆汁の排泄、解毒、全身の臓腑や器官を調節するという所謂疏泄作用を営んでいます。また肝は脾に対して相克(五行説)の関係にあり、正常な状態では脾に抑制を加えることにより脾の働きの正常性を保持しています。
一方怒りの感情や精神的ストレスは肝によって処理されると漢方では考えており、肝の機能が不十分だと、怒りやストレスで生じた心理的なエネルギーが処理されないまま肝に鬱積して肝の疏泄作用全体を阻害します。その結果、肝が脾の働きを調節するという機能も妨げられて、脾は正常に働かなくなり、痙攣性の疼痛、気滞による腹満、腹痛、或いは便通異常など種々の消化器症状を惹き起こします。肝と脾の不和が起こる場合、実証と虚証に分けて処方を考えていきます。主に肝の鬱積した熱をとる柴胡を含む処方がよく使われます。
2、脾虚の場合
脾虚があるために、外からの刺激で容易に腹痛、腹満、腹鳴、便通異常などの不快な消化器症状を起こす場合があります。胃腸が冷えたり、飲食物の刺激などによって腸管が過剰に反応して消化機能や消化運動の異常を起こすのは、元来その人に脾虚があるためで、脾虚は体質的な胃腸虚弱、病後や術後、過労、心労、飲食の不節制などが原因となって生じます。脾虚の人は胃腸の故障を起こし易いだけでなく、一般に疲れ易く無気力で元気がなく、しばしば冷え症です。処方としては脾を補う人参を含むものがよく使われます。
症例
男 痩せ型 年齢・・17歳
半年ぐらい前から、学校の授業中などに度々腹痛がし、下痢をするということが起こるようになりました。ただ、午後の部活の時間になると、嘘のように痛みは治まっていたそうです。近頃はその頻度も増えてきて、病院で検査したところ、神経性の下痢と言うことで安定剤を処方してもらったそうです。精神安定剤を服用すると調子は良かったそうなのですが、若いうちから精神安定剤を服用することに不安になり、来店されました。
(経過)
この方は、元々胃腸の虚弱な体質のところに、受験勉強などのストレスで腸の働きのバランスを崩して、このような症状を起こしたと考えられます。そこで、体全体の力を底上げする保健薬とともに、胃腸のバランスを整える漢方薬を併用していただきました。その後は段々と下痢などの症状も取れていき、精神安定剤も使わなくてすむようになってきました。また、顔の表情も明るくなり、集中力なども出てきて勉強もはかどるようになったと大変喜んでいただけました。