生理不順
生理不順とは
 最近婦人科のトラブルを抱えている女性が多く、若い人にも増えてます。
 子宮や卵巣の病気のサインは生理不順、生理痛、生理の出血状態などに現れます。ただし、月経の異常は病気だけでなく、精神的・肉体的ストレスや生活習慣による体調変化にも影響します。
 自分の月経状況を知り、その変化に気づくことが、体調管理、病気の早期発見につながります。
《子宮の構造と月経の起こる仕組みを簡単に見ていきましょう》
 子宮は鶏卵ほどの大きさの、筋肉でできた袋状の器官です。上部2/3を子宮体部といい、妊娠中に赤ちゃんを宿すところです。下部1/3を子宮頸部といい、子宮を支える部分です。
 子宮体部の内側の表面は、妊娠したときに受精卵のベッドの役割をする子宮内膜に覆われています。
 子宮内膜は、卵胞期(低温期)から徐々に厚みを増し、排卵後の黄体期(高温期)に入ると更に厚みをします。こうして、いろいろな栄養物を蓄え、妊娠が起こった場合に受精した卵子を受け入れて発育させることができるよう備えます。しかし妊娠が成立しないと、子宮内膜は子宮の壁からはがれ落ち、血液と一緒に体外に排出されます。これが月経です。その後、子宮内膜は妊娠に備えて再び厚くなり、妊娠しなければ排出されるというサイクルを繰り返します。
この月経サイクルには、様々なホルモンが働き、規則的な周期を保っています。
《子宮の構造》
 月経以外に性器から出血することを不正出血といいます。
不正出血は、女性ホルモンの分泌の乱れや、流産、子宮筋腫など様々な原因で起こります。
特に注意したいのが子宮癌です。子宮癌には子宮体部にできる子宮体癌と子宮頸部にできる子宮頸癌がありますが、どちらの癌も初期症状として不正出血が起こることがあります。
 閉経前後の年代では、ホルモン分泌の乱れにより不正出血が起こりやすいため、「更年期だから」と見過ごしがちですので注意が必要です。

 月経は通常25~38日周期で起こり、周期ごとの変動は7日程度です。思春期や更年期では月経周期が不規則になることがありますが、3ヶ月以上月経のない無月経症になると心配です。
無月経症は過激な間違ったダイエットや、急激な体重の増加、ストレス、ホルモン分泌の異常などで起こることがあります。また、ホルモンを分泌する卵巣に腫瘍ができた場合などにも、無月経になることがあります。
《生理不順のタイプ》
・頻発月経
周期が短く頻繁に起こります。
排卵がある場合には、卵胞期、黄体期が極端に短くなっていることがあります。
無排卵の場合には、卵胞内で卵子が大きく育たず排卵が起こらないため、月経期がすぐに来てしまいます。出血量が少なくだらだらと2週間も続くこともあります。
どちらもホルモンの分泌や血液の循環が悪く放っておくと不妊症になりかねません。
・稀発月経
月経がたまにしか起こらず、年9回以下になります。
・過多月経
出血量が多く8日以上続きます。レバーのような血の塊が出る場合もあり、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因の可能性もあります。
・過少月経
出血量が少なく、1~2日で終わることもあります。
子宮の発育不全やホルモンの分泌異常、無排卵などが原因として考えられます。
《病院での検査と治療》
婦人科を受診すると、基本的には次のような流れで検診が行なわれます。
・問診
月経の周期や、期間、量、痛みの有無のほか、症状がいつからあるのかなどを詳しく尋ねれます。
・内診
子宮や卵巣などの状態を診る内診が行なわれます。
・画像検査
経膣超音波検査が行なわれ、必要があればMRIやCTなどによる画像診断で詳しく検査します。
・ホルモン療法
 カウフマン療法といわれる治療では、ホルモン剤(エストロゲン、プロゲステロン)によって生理を起こし、これを毎月繰り返すことによって、1ヵ月に1度生理がくるというリズムを人工的につくります。
 無排卵が原因となった生理不順、無月経を解消するための治療法としては、排卵を促すために排卵誘発剤を使います。
 ピルには避妊目的というイメージがありますが、ピルを服用することで、一時的に妊娠した状態をつくり、排卵を抑えてホルモン量を一定にするという作用から、生理不順の治療にも応用されます。ピルの服用と休薬を繰り返すことで、女性ホルモン及び生理をコントロールし、人工的に一定周期のリズムをつくります。カウフマン療法と同じく、体に生理のリズムを覚えさせることを目的とした治療法です。
 その他生理不順のケースによって、上記とは異なるホルモン治療を行うこともあります。
  
漢方では?
 子宮や卵巣など婦人科の働きには肝・腎・脾が深く関わっています。それらの臓に弱りが生じると、異常な寒熱、血の不足、血の滞りなどが起こり、様々な病症を現します。
・瘀血
 瘀血といわれる血の滞りが生じると、経血の排出が円滑に行なわれなくなります。
瘀血があると、生理不順に加え、生理痛や下腹部の張り、経血が暗褐色になったりレバーのような凝血塊が増えたりします。また、月経前から月経開始時にかけて体調が悪いことが多くなります。
その他、冷えのぼせ、顔色が優れない、不妊症などの病症を伴うこともあります。
・血虚
 血虚があると生理の遅延が起こり、経血は淡く、量は少なくなりやすくなります、中には経血が少量で2週間以上ダラダラと続く人もいます。また、人によっては無排卵、無月経を起こすこともあります。
もともと不足している血を失う生理中に体調が悪いことが多くなります。
血虚がある人は全身的に栄養状態が悪く、皮膚枯燥し、唇や爪の色艶が悪くなったり、冷え性や貧血、不妊症などの病症を伴うことがあります。
・ストレス
 過剰なストレスを抱え込み、気のめぐりが悪くなると、気によってめぐらされている血や水の滞りが生まれます。
漢方医学には病気になる原因として、内因というものがあり、内因のことを七情といいます。怒る、喜ぶ、思う、憂う、悲しむ、恐れる、驚くなどのことで、これらの感情を極端に経験すると、一定の臓器に虚が発生すると考えられています。

『怒りは肝を傷る』・・・怒りすぎると肝虚になる。
肝のしっかりしている人は、几帳面で仕事などもきちんと片づけることが出来ます。この原動力になるのは肝に蔵している血です。
しかしこれが行き過ぎ、仕事でも何でもやりすぎてしまうと、血を消耗しイライラ怒りっぽくなって肝が弱ってしまいます。

『喜は心を傷る』・・・喜びすぎると心虚になる。
心は陽気の多い活動的な臓器です。心がしっかりしている人は、陽気で気分が和やかです。
しかし、喜びすぎると気が浮かび上がり、心に熱が多くなりすぎて心が弱ってしまいます。

『思は脾を傷る』・・・思いすぎると脾虚になる。
脾のしっかりしている人は思考力があり、記憶力もよく、落ち着いて物事が考えられます。しかし、思いすぎ・考えすぎると、気の循環が悪くなり脾が弱ってしまいます。

『憂は肺を傷る』・・・憂い悲しみすぎると肺虚になる。
肺がしっかりしている人は、人の気持ちが分かり共に悲しむことが出来ます。しかし、憂い悲しみすぎると、肺気の発散が悪くなり肺が弱ってしまい鬱のようになってしまいます。

『恐は腎を傷る』・・・驚き恐れすぎると腎虚になる。
腎がしっかりしている人は、謙虚な気持ちでいられます。しかし、驚き・恐怖を味わったり、へりくだりすぎた状態が続くと腎が弱ってしまいます。

このように同じストレスを受けても、その時の感情や、人それぞれの体質によって、弱る臓に違いがあり、様々な症状として現れますが、月経異常もその中の1つに数えられます。

 現代医学的にも、過剰なストレスを受けると、脳の視床下部や脳下垂体からのホルモンの放出が乱れ、月経に影響すると言われていますので、ストレスとうまく付き合い、時にはパッと解消することも大切です。
症例
  
症例
28歳 女性 165cm 45kg
 生理不順があり体調が優れないとご相談をいただきました。
症状を詳しく伺ったところ、もともと生理が遅れがちで、最近は2~3ヶ月に1回しか来なくなった。激しい生理痛がある。食が細く、身体が疲れやすく体がだるい。ひどい冷え性で困っているとのことでした。
・投薬と養生
 食が細く元々胃腸の虚弱な脾虚体質があり、血色が悪く冷えもひどいことから血虚(血の不足)もあると考えられます。
脾虚のため、食が進まず、食べたものから気・血・水をつくり出す力が低下したため、気血両虚となり、稀発月経や冷え性、倦怠感が現れたものと思われます。
 そこで、脾を補う人参、血を増やし肝を補う当帰という生薬の入った漢方薬を中心に服用していただくことになりました。

 また生活養生として、身体を冷やさないように、冷蔵庫や冷凍庫で冷やしたような冷飲食、果物や生野菜を控えめにしていただき、発酵食品や根菜類を多く摂っていただくようにしました。また、入浴はシャワーが多いとのことでしたが、お風呂につかって身体を温めていただくようにし、ホルモンや血液など身体の作り替えが1番活発だといわれる夜の22時~2時の間になるべく多く睡眠状態でいれるよう、早く寝るように心掛けていただきました。

 服用後1ヶ月で倦怠感や冷えなど、身体の調子がずいぶんよくなったと連絡をいただき、続けて服用していただくことになりました。
服用開始後約1年ほどで生理周期が整い、生理痛もほぼ無くなりました。
それから2年後、妊娠の連絡をいただき、めでたく無事に出産されました。