脂肪肝
脂肪肝とは
 「脂肪肝」とは、肝臓の細胞に脂肪が過剰にたまった状態をいいます。アルコールやブドウ糖、脂肪酸は肝臓で分解処理されています。これらが肝臓の処理能力以上に肝臓に運び込まれると、中性脂肪という形で肝臓内にストックされます。皮下や内臓に中性脂肪がたまると肥満になりますが、肝臓にたまると脂肪肝になります。肝臓がフォアグラのような状態になったといえば、わかりやすいかもしれません。ほとんどの場合この脂肪の蓄積は元に戻すことができて、肝炎の症状である肝細胞の壊死や炎症を伴わない状態をいいます。

 しかし、この脂肪の量が多くなりすぎると問題になります。脂肪肝の3大原因は過食(肥満)、アルコールの飲みすぎ、糖尿病です。

もともと肝臓は、人体の化学工場といわれ、人が生きていくうえで必要なエネルギーや物をつくったり、不要となった物を解毒するなどの働きがあります。こういった機能を代謝と呼び、例えば、食物から取り込んだ脂肪酸を肝臓で人の利用できる型の中性脂肪に変え、血液を通じて全身に運び、エネルギー源としたり、各臓器の材料とします。逆に全身の脂肪組織から血液中に放出された脂肪酸を取り込み、中性脂肪に変えて再利用します。

 このように肝臓は食物から摂取する脂肪や全身の脂肪組織から運ばれてくる脂肪、肝臓自身が合成する脂肪で、いつも脂肪と共に働いているといえます。肝臓が正常に機能していれば、問題ありませんが、食事から摂取する脂肪が増えすぎたり、肝臓自身の過労や病変で機能が低下すると、全身から運ばれてくる脂肪酸を処理する力が落ち、あっという間に余分な脂肪で満たされてしまいます。どれくらいの期間で脂肪肝になるかというと、よく暴飲暴食をする人の場合、1~3ヶ月で発症するといわれています。

 よく間違われやすいのは、脂肪分の多い食品を控えれば脂肪肝にならないと思われていることです。しかし、糖質やアルコールも脂肪酸のりっぱな原料で、肝臓の処理能力を超えた食べ方や飲み方は確実に脂肪肝につながります。

 肝臓の処理能力は人によって個人差があります。また疲れている時などによっても違ってきます。

 脂肪がたまりすぎて肝細胞が膨れると、肝細胞の間の毛細血管が圧迫されて血流が悪くなり、酸素や栄養の供給が妨げられます。その結果、全身倦怠感、腹部膨満感、右上腹部の痛みなどが現れるこがあります。また、ひどい場合には肝細胞が壊死し、肝機能が低下することもあります。しかし、多くの場合、初期の自覚症状はなく、会社の健康診断やほかの病気の検査を受けて偶然発見される場合がほとんどです。血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)の値が軽度から中等度に上昇し、γ-GTP、コリンエステラーゼ、総コレステロール、中性脂肪などの値が高い場合に脂肪肝が疑われます。

 脂肪肝の多くは治療すれば元の健康な肝臓に戻すことができるため、以前はそれほど深刻な病気と考えられていませんでしたが、近年、脂肪肝の中にも肝硬変に進行するものがあることとわかり、早期の治療が進められるようになりました。お酒の飲みすぎや肝炎ウイルスなどの明確な原因が無いものを特に「非アルコール性脂肪肝疾患」(NAFLD=ナッフルディー)といいます。放っておくと「非アルコール性脂肪肝炎」(NASH=ナッシュ)と呼ばれる肝炎を引き起こす場合や、血管に脂肪がたまる動脈硬化、糖尿病などを伴うことがあるので注意が必要です。アルコールの飲み過ぎなのか、食べ過ぎなのか脂肪肝になった原因を突き止めることからはじまります。食事療法や運動療法なくして脂肪肝を改善させることは困難です。
漢方では?
漢方では脂肪肝を改善する処方というわけでなく、脂肪が溜まりやすい体質を改善する目的で漢方薬を使っていく場合があります。
脂肪は肝臓だけに溜まるわけではなく、皮下や血管内にも溜まります。脂肪肝の人は食欲もあり体にも脂肪がつきやすい体質の人だといえます。漢方では肝臓の肥大によるものと考えられる胸脇苦満という症状や、脂肪肝に伴う不眠、イライラやのぼせなどの症状を考えて処方を考えていきます。

体質改善としてよく使われる処方には、防風通聖散、大柴胡湯、桃核承気湯などがあります。

 防風通聖散は日頃から「美味しい、美味しい」といって食べる方が栄養過多に加え、のぼせ、便秘、太鼓腹、あるいは蕁麻疹や湿疹のできやすい場合に使います。体の毒を汗、便、尿にして排出させます。

 大柴胡湯はどちらかといえば「黙々と食べる」方、筋肉質でわき腹やみぞおちの辺りに張りがあり苦しく、便秘しやすい症状がある場合に使います。精神的なストレスやいやな事があると肝気鬱結を生じ易く、イライラ、怒りっぽい、のぼせ、口が苦い、眼が充血するなどの性質があります。

 桃核承気湯は瘀血(おけつ)のひどい方向けの処方で、のぼせて顔色赤黒く、頭痛、肩こり、お腹の張り、ひどい便秘の症状がある場合に使います。

 漢方薬を服用した場合でも食事療法または運動療法、禁酒などは不可欠ですが、まじめに取り組んでいただければ脂肪肝は改善できる病気といえます。