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正しく立つということ

正しく立つということ
今回、古典を通じて正しく立つことについて、考察してみたいと思います。

『先日、ヨガクラスで、サマスティティ(タダーサナ 山のポーズ 直立して立つ)のときに、足の親指から足の内側を通りムーラバンダ(肛門の引き締め)からウディヤナバンダ(下腹部の引き締め 丹田あたり)につながる線を意識し、外側に力を入れるのではなく、内へ内へ力を集めるという話がありました。
(赤ちゃんは身体の筋力が弱く、丹田の力で寝返り→ハイハイ→つかまり立ちを経て、筋力が付き立つようになり、丹田(バンダ)の働きが忘れられていく。
動物(チーター)などのしなやかな走りは丹田を中心に内に集まった力が、外に跳ね返り、爆発的な力が生み出されているように見える。)
また、別の先生曰く、全てのポーズは最終的にサマスティティに近づいていくのが目標という話があり、またこれは、経絡でいうと足の太陰脾経であると思われ、正しく立つことと、脾の関連を探すために脾に関連する古典を調べてみることにしました。』

【素問 太陰陽明論篇第二十九】
「陽者天気也。主外。陰者地気也。主内。故陽道実、陰道虚。」
「食飲不節、起居不時者、陰受之。」
「陽受之、則入六府、陰受之、則入五蔵。」
「故喉主天気、咽主地気。故陽受風気、陰受湿気。
「陽病者、上行極而下、陰病者、下行極而上。故傷於風者、上先受之。傷於湿者、下先受之。」
「四支皆稟気於胃、而不得至経。必因於脾、乃得稟也。今脾病不能為胃行其津液、四支不得稟水穀気。気日以衰、脈道不利。筋骨肌肉、皆無気以生、故不用焉。」
「脾者土也。治中央、常以四時長四蔵。各十八日寄治、不得独主於時也。脾蔵者、常著胃土之精也。土者、生万物而法天地。故上下至頭足、不得主時也。」
「五蔵六府之海也。亦為之行気於三陽。蔵府各因其経而受気於陽明。」

陽は天の気を受ける所、即ち外部を司っています。陰は地の気を受ける所、即ち内部を司っています。
陽は外邪によって邪が実し易く、陰は精神過労によって精神が虚し易い。
また、飲食の不摂生、起居の不摂生による精神消耗の邪気は内部に、即ち陰に加わります。
陽に中りますと六腑に入ります。陰に中りますと五臓に入ります。
喉、即ち気管は天の気を受け入れ、咽、即ち食道は地の気を受け入れますので、陽中の陰の肺経は風気を受け、陰中の陰の脾経は湿気を受けます。
陽病は上行し、極まって下行します。陰病は下行し、極まって上行します。ですから、風に傷つけられるとまず上部が犯されます。湿に傷つけられるとまず下部が犯されます。
手足はすべて脾胃の支配下であり、飲食物の精微からなる精気を胃から直接受けて、他の部位のように十二経脈に依存することはありません。
胃の働きをなさしめているのは脾です。だからその脾が病んで、胃に津液つまり体液を巡らせる働きを命じとない時は、手足は飲食物の精微を受けることができません。
故に体の栄衛の気がだんだんと衰え、経脈の運行も順調でなくなります。そうすると筋・骨・肌・肉も皆生気を失ってきます。そこで手足がまず先に不自由になります。
 脾は五行的には土性です。故に肝、心、肺、腎がそれぞれ東、南、西、北を治めているのに対し脾は中央を治めています。故に春夏秋冬の四時において、末の18日間ずつは脾が直轄支配し、この時を土用といいます。
脾は土の飲食物の精微である胃の気を他の臓腑に施している作用をなします。
その土は万物を生み出して養育する天地の陰の作用を営むところです。
 五臓六腑は各々、それに属する経脈を通じて陽明の胃から水穀の精微を受けています。

【素問 五臓生成篇第十】
「脾之合肉也。其栄唇也。其主肝也。腎之合骨也。其栄髮也。其主脾也。」
「多食酸、則肉胝接而唇掲。多食甘、則骨痛而髮落。」

脾の合は肉、その栄えは唇、その主は肝である。腎の合は骨、その栄えは髪、その主は脾である。このことから、酸味を過食すると、肉が萎縮して、唇がまき上がってくる。甘味を過食すると、骨が痛んで、髪の毛が抜け落ちる。

【素問 臓気法時論篇第二十二】
「脾主長夏。足太陰陽明主治。其日戊己。脾苦湿。急食苦以燥之。」
「病在脾、愈在秋。秋不愈、甚於春。春不死、持於夏、起於長夏。禁温食飽食、湿地濡衣。」「脾病者、日?慧、日出甚、下?静。」
「脾欲緩。急食甘以緩之。用苦写之、甘補之。」
「脾病者、身重、善肌、肉痿、足不收行、善?、脚下痛。虚則腹満、腸鳴、?食不化。取其経、太陰陽明少陰血者。」
「脾色黄、宜食鹹、大豆、豕肉、栗、?皆鹹。」
「辛散、酸收、甘緩、苦堅、鹹?。毒薬攻邪、五穀為養、五果為助、五畜為益、五菜為充。気味合而服之、以補精益気。此五者有辛酸甘苦鹹、各有所利。或散、或收、或緩、或急、或堅、或?。四時五蔵、病随五味所宜也。」

脾は夏の土用である長夏にその気が旺んになって、すべてを主宰します。この時に邪を受けて脾が病むと、足の太陰脾経と足陽明胃経とをもって主治する経絡とします。脾気の旺する日は戊と己です。脾が病むと、湿という症状に苦しみます。その場合は速やかに苦みのものを与えて湿を乾かしてやる必要があります。
病が脾にあると、秋に癒えるものです。もし秋に癒えなければ、春には激しくなります。春に死ななければ、夏は持ちこたえられ、長夏に再発するものです。この病には温かすぎる飲食物、食べ過ぎ、湿った場所、濡れた衣服は禁物です。
脾の病は、昼下がりにその病状がはっきりと現れ、日の出に激しく、夕暮れに静かになるものです。
脾の気を緩める必要があるときは、速やかに甘味の物と摂らせて、これを緩めてやります。即ち甘味の物では緩める働きを補し、苦みの物では緩める働きを瀉します。
脾の気が虚してくると、腹がいっぱいにつまって張り、ゴロゴロと腹鳴りがして、消化不良で下痢し、粥のような便を下します。このような時は、足太陰脾経と足の陽明胃経から取穴します。更に足少陰腎経の鬱血した血絡から瀉血します。
脾の色は黄、病的な黄を発色した者には、鹹味の物を食べさせます。鹹味の物とは大豆、豚肉、栗、豆の若葉などです。
辛味の物には、散、即ち発散作用があります。
酸味の物には、収、即ち収斂作用があります。
甘味の物には、緩、即ち緩和作用があります。
苦味の物には、堅、即ち乾堅作用があります。
鹹味の物には、軟、即ち軟化作用があります。
また、薬物で病邪を攻撃し、五穀で五臓六腑を営養し、五果でその手助けをし、五畜でその力を益し、五菜でその働きを補います。
更に、これらの物の寒温の性質である気や、酸苦甘辛鹹の味を調和させて飲食させ、五臓の精気を補益するように心掛けねばなりません。
このように、春夏秋冬の四時の気が原因となって起こった五臓の病には、それぞれの五味の作用を発揮させるように考慮して用いてやらなければなりません。
 
【霊枢 決気篇第三十】
「人有精気津液血脈」
「両神相搏、合而成形。常先身生、是謂精。」
「上焦開発、宣五穀味、熏膚、充身、沢毛、若霧露之漑、是謂気。」
「腐理発泄、汗出??、是謂津。」
「穀入気満、?沢注于骨、骨属屈伸、洩沢補益脳髄、皮膚潤沢、是謂液。」
「中焦受気取汁、変化而赤、是謂血。」
「壅遏営気、令無所避、是謂脈。」
「六気者、各有部主也。其貴賎善悪、可為常主。然五穀与胃為大海也。」

人体には、精・気・津・液・血・脈がある。
陰陽の両性が会合して、一つの新しい形を生じます。この人体に先んじてできたものを、精といいます。
上昇が開き、飲食物の精微を発して皮膚を温め、身体に充実して毛髪を潤沢にし、ちょうど霧や露があまねく広がって万物を潤すように全身に充満するものを、気といいます。
皮膚から発して、汗となってもれ出るものを、津といいます。
飲食物が胃に入って、そこで消化吸収された精微は、血気に変化します。その血気の中で、骨に注いでそれを潤し、関節に注いで潤滑にしてその屈伸を容易にし、また滲出して脳髄を補い、皮膚を潤沢にするものを、液といいます。
飲食物が胃に入って、そこで消化吸収された精微が中焦から出て、水分と混じって赤く変化したものを、血といいます。
営である血がみだりに運行したり、停滞したりしないように、一定の基準に従って全身を循環するように保っているものを、脈といいます。
六気には、それぞれ分布するところと、それを司る臓があります。主として皮膚は気の働きを司り、津は汗の孔から発し、液は骨や脳に満ち、血・脈は全身を巡ります。
腎は精を司り、肺は気を司り、脾は津液を司り、肝は血を司り、心包は脈を司る。
ただし、この六気は全て飲食物が変化した精微によってできているものですから、その精微を飲食物から消化吸収して取り出す働きを持つ胃が、いつも根本になります。ですから、この胃を水穀の海といい、春夏秋冬の四時を通じて衰えさせてはならない大切な器官としています。

これらの条文から、六気(精・気・津・液・血・脈)及び、手足を働かせる大本となるのが脾であり、脾胃を健全に保つためには、飲食・精神過労の摂生に努めることが必要になります。

また、田中保郎先生の東洋医学 考根論では、
・ 植物の水や栄養素を吸収する根は人間の腸(小腸)にあたる。
・ 生物の進化の歴史から見ると、全ての動物は腔腸動物から進化したといわれ、脳も胃も肝臓も肺も何もない腔腸動物(ヒドラやイソギンチャクなど腸(腸と口と触角)だけで生きてい生物)が、餌を捕まえ、消化し、子孫を残すことができる。 
・ 現在、人間の体は脳が司り、脳の考えが神経に伝わり体を動かしている。脳が我々の臓器を動かし、命令を下していると思われています。しかし腸は脳より先にでき、脳に優先している。脳の指令は腸には行かず、反対に腸の指令は脳に届く。
・ 脳の臓器移植では人格変化は認められないが、心臓などの臓器を移植すると、臓器の持ち主の人格が移る多くの症例が報告されている。
・ 昔から「腹を割って話す」「腹が立つ」「はらわた(腸)煮えくり返る」「腹黒い」などの気持ちや考えと腹(腸)の関わる言葉が沢山ある。

この話から脾(腸)は人間の思考にも関与している可能性がうかがえます。
食べ物は肉体だけでなく精神もつくると言われるのには、こういったことが関係するのかもしれません。

『また、先日ヨガのクラスで、初めて受けた先生に、あなたは足の使い方がうまくいっていない。歩くことが足らない。と指摘されました。実際に歩けばいいのかを聞いたところ、それはまだ勉強中だから、これ以上は言わないと言われました。その言葉は、実際に歩くことに加え、もっと大きな意味合いを含んでいるようでしたが、わからないままとなりました・・・。
 その後、この資料を作りながら思いついたのが・・・!
歩きなさい→座ってばかりではいけない→久坐傷肉【素問 宣明五気篇第二十三】→脾を強めなさい(脾経を働かせなさい)ということです。(こじつけです。)

追記:上半身(手)からバンダヘつながる経路は手の太陰肺経のようです。
2本足で歩くようになった人間は軽視しがちですが、4本足で立つ動物、ハンドスタンドをするためには、もっと肺経を強めるため呼吸を大切にする必要があるのかもしれません。

《まとめ》
正しく立つためには脾経、肺経を強める必要があります。そのためには食養生、精神養生に加え呼吸を大切にする必要があり、そこから正しい姿勢(正しく立つ)が生まれます。そしてそれは、健全な精神へとつながっていきます。